コミュニケーション力を養う
聖教新聞 2005年12月4日付
くれよんくらぶ672号
 
鳴門教育大学  三宮真智子教授に聞く
 「人と交流することが苦手」という人が増えている。快適な人間関係を築くには、コミュニケーションの能力を養うことが不可欠である。交流を妨げる要因を取り除き、円滑な関係をつくるには、どういう点に気をつけたらよいか。鳴門教育大学の三宮真智子教授(認知心理学)に聞いた。
 
わかりやすさと感じよさが関係を円滑に
自分に注意してくれる人"をつくれるかがカギ
 
T.「今度にしよう」に誤解の可能性
――お互い悪意はないのに、人間関係がぎくしゃくすることがあります。
 人と人が交流するとき、まったく誤解のない、いい関係を築くのは、難しいですね。さまざまな人に「何にストレスを感じるか」と聞くと、やはり「人間関係」という答えです。ごく大まかに、そしてシンプルに言えば、二つのポイントがあると思います。
 
一つは、「分かりやすく伝える」ということ。
一つは、「感じよく伝える」ということです。

 
――「分かりやすく伝える」とは?
 相手が捉え違いをしない、あるいは誤解をしないように伝えるということです。
「自分が相手に誤解された」ということは比較的「気がつきやすい」のですが、「自分が相手を誤解した」ということは「気がつきにくい」ということが、大学生を対象にした調査でわかっています。要するに、人は「自分の都合のいい方に解釈する」傾向があるということですね。
 
 もう少し詳しく、「誤解」の中身を見ていくと、@聞き違いA指示語や省略語の取り違いB意味の取り違いC発話意図の取り違い、の四つに分類できることが分かります。
@は 例えば「明日、7時に集合」を「明日、1時に集合」と聞き間違えた、などの間違い。
Aは 「あの仕事、もうやらなくていい」と言われて、「あの仕事」の中身を取り違えるミス。
Bは 例えば、友達からキャンディーをもらったとき、形を評して「かわいいキャンディーね」と言ったら、相手は「小さいキャンディーをくれたわね」と、悪い意味にとってしまった、などの誤解。
ここまでは、比較的単純な誤解と言えますが、Cだけは少し違います。
Cは 「どういうつもりで言ったのか」についての誤解です。例えば「ちょっと寒くないですか?」という言い方は、状況によっては「暖房をつけてほしい」、あるいは「窓を閉めて欲しい」と、暗に要求を表現していることになります。
 
 また、別の例としては、グループで旅行に行く計画を立てているとき、なかなか内容が決まらないので「また今度にしよう」と発言したら、グループ内のある人には「自分たちとは行きたくないのだな」と受け取られてしまった、というケースがあります。本当に行きたくないのかもしれないし、単に「仕切り直して考えよう」と前向きに提案したかっただけかもしれません。いずれにしても、誤解される可能性を含んでいるわけです。
 
U.テレビ電話は注意が必要
――「誤解」を避けるポイントは?
 あいまいな言い方をしない、相手の立場から捉え直す、大事なことは確認する、他の方法(メモ、資料、表情など)も活用する、といったところでしょうか。
 
それから、可能な限り「直接対面する」ということです。
 
 最近の傾向で言うと、インターネットの掲示板やメールでのトラブルが増えています。これらは直接話すのと比べると、どうしても手間がかかって情報が少なくなりがちです。しかもいったんトラブルが起きると、言葉じりを拾われたり、部分引用によって文脈を変えられてしまったりし、さらに日数が経って深刻さが増してしまいます。
 
 やはり、時間も空間も共有して対面するのにこしたことはありません。リアルタイムであいづちや返事があるから、会話が弾み、関係が円滑になるのです。
 
 盛んになってきたテレビ会議・電話であっても、対面に比べれば、コミュニケーションは限られたものになるようです。テレビ会議・電話では、あいづちの効果は対面より小さくなりがちです。聞き手の「存在感」が小さくなってしまうからだと思われます。テレビ会議にはもちろん、利点も多くありますが、カバーできないこともあるのです。テレビ会議では、ちょっとしたしぐさやつぶやきも見逃しやすい。対面であれば、相手の反応を見て、すぐにフォローできます。
 
V.印象をよくする言い方を学ぶ
――それでは、「感じよく伝える」には、何を心掛ければいいでしょう。
@声の高さや大きさ、話す速さ、間の取り方などに注意する。A表情、動作、視線、服装、ヘアスタイル、小物など、言語以外の要因にも注意する。B言語表現に注意する、というポイントがあげられます。
 
@Aは分かりやすいと思います。@は例えば、話し方が速すぎると独りよがりな印象が強くなりますし、逆に遅すぎると、熱意がないように受け取られがちです。Aは「外見が思いがけないメッセージを伝えてしまうことがある」ということです。
Bは「言い方ひとつで印象は変わる」ということです。例えば、相手のマイナス面を指摘しなければならない場合。「まったく、あなたはやることがのろいわね」といった表現は最悪です。「この作業とこの作業が、まだ残っているのね」と、事実を指摘するだけで十分で、人格を評価する必要はないのです。特に忙しい職場などでは、「押しつけ」のような言い方が横行しがちです。あくまでもアドバイスとして伝え、相手の言うことに聞く耳を持っているというスタンスを示すことが重要です。
表現の場数を踏むのも大事ですが、それと同時に、経験を振り返ることも非常に重要です。起きてしまったトラブルの原因を冷静に考える癖をつけることですね。
さらに、自分にちゃんと注意してくれる人、不適切な発言を指摘してくれる人をつくる努力も続けましょう。「よくぞ言ってくれた、ありがとう」と言いあえる関係が、よりよい人間関係を広げます。
 コミュニケーションの最中では過ちに気づきにくい。だからこのように、後から内省する、指摘しあうという習慣が不可欠となってくるのです。
 
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