出口見えぬ少子化 初の人口減少
東京新聞 2005年12月23日付
くれよんくらぶ697号
 
 厚生労働省が22日発表した人口動態統計の年間推計。2005年の総人口が、統計を取り始めた1899年以来初めて減少に転じるとの推計は、当初の想定より2年も早い。少子化対策を加速しようとしていた政府にとって深刻な事態で、対策の前倒しや抜本的見直しが迫られることになった。しかし、日本の将来を左右する少子化問題に特効薬はなく、政府も頭を抱えているのが実情だ。(政治部・高山晶一)
 
「想定」追い抜く「現実」目算崩れ頭抱える政府
■強 化
 「少子化対策を抜本的に強化しなければならない。若い世代と子どもの目線に寄り添うような、政策転換が必要だ」猪口邦子少子化担当相は22日、閣議後の記者会見で、人口減少の感想を求められ、少子化対策に、より予算配分すべきだと大演説をぶった。政府の少子化対策は、1989年の合計特殊出生率が1.57と過去最低(当時)となったことをきっかけにスタート。
 
 01年4月に就任した小泉純一郎首相も、企業に少子化対策を義務づける次世代育成支援対策推進法を制定したり、先の内閣改造で少子化担当相を初めて専任大臣としたりと、力を入れてきた。
 
 今月24日に閣議決定する06年度予算政府案でも、児童手当の支給対象年齢拡充や、不妊治療に対する助成制度の期間延長などが盛り込まれることになっている。人口動態は、将来の経済成長にも影響する重大要因。構造改革を進めていく上でも、重視せざるを得ないのだ。
 
■予 測
 こうした取り組みの背景には、厚労省の国立社会保障・人口問題研究所が02年1月に発表した「日本の総人口が06年をピークに減少に転じる」という予測があった。
 
小泉政権はこの予測を基に、人口減少は07年に始まると事実上想定。全体的な少子化対策スケジュールを描いてきた。閣僚や有職者でつくる「少子化対策推進会議」が来年6月にまとめる報告書の内容を「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)」に反映。これを受け、各相が予算要求し、07年度予算編成で、より抜本的な少子化対策を打ち出す―という段取りだ。
 
 ただ、内閣府が今月中旬に発表した「少子化社会白書」では、人口では、人口減少が06年に始まる可能性に言及。さらに、05年と「前倒し」された今回の発表で、政府の目算は完全に崩れ、人口減少が既に訪れているのに、抜本的な対策はこれから練り上げるという格好になってしまった。「一分もムダにすることなく、抜本的な新しい流れをつくっていくことに全力を尽くしたい」 猪口担当相は22日の記者会見で、対応を急ぐ考えを強調したが、政府の対策は後手に回ってしまったといえる。政府関係者も「(推計を)重く受け止めなければならない」と語る。
 
■難 題
 ただ、政府の意気込みとは裏腹に、少子化対策の「特効薬」は簡単に見つかりそうにないのが実情だ。猪口担当相は会見で、今後重点を置く対策として@育児休業制度を取得しやすい環境整備など、仕事と育児の両立支援A子育て世代に対する経済支援―を挙げた。しかし、政府内では「『この政策をやれば確実に少子化に歯止めがかかる』という政策は、各国の例を見てもなかなかない」(安部晋三官房長官)というのが共通認識になっている。
 
 一連の構造改革に道筋をつけた首相が、人口減という国の基盤にかかわる難題で及第点の施策を打ち出せるのか―。来年9月の退陣までに残された時間は多くない。
【ふぼれん事務局長(菅野司)のコメント】
 一組の夫婦が生む子どもの数は、減ったとはいえ、それほどの低下をしているわけではない。出生率を上昇させる特効薬が、いまのところ存在しないのは、問題の核心をついた議論がなされていないからである。若者の現状を正確に把握し、分析することが大切である。またそれを育ててきた大人たちの部分も同様に捉えるべきである。
 
 多くの若者は、人生を歩むうえで「結婚を含む苦労」を極端に避ける傾向にある。「今のままの自分でいい」とという「オンリーワン思想」がそれに拍車をかけた。現実を打破するための「苦労をいとわない」という考え方。人と競いあうことの重要性など。いわゆる「20世紀後半の平等思想」が人をだめにしてきた。そのような考え方からの、社会的脱却が前提なのだと思う。
 
 少し短いコメントなので、物議をかもすかもしれない。しかし、政府や自治体の少子化対策を見ていると、小手先だけの対策になっているように思えてならない。経済的な支援を否定はしないが、外国の事例だけに依拠することなく、日本らしい新しい政策が、乳幼児支援の初期段階から打ち出される必要がある。
 
まずは、教育権をそれぞれの自治体に全面的に任せるべきである。乳幼児の保育と子育てのあり方、小中学校の基礎教育のあり方を、21世紀型として研究し直し、人の心(脳)の成長を基本ベースにした「心の教育と発達支援」の方向性を打ち出す必要がある。「遊びのなかで乳幼児は育つ」ことが明確になってきている時代、「早期教育が子どもの育ちをダメにしている」ことが明らかになってきている時代に、幼稚園からの義務教育などという方針に、驚きをかくせない。
 
 人との関係を大切にしながら、競い合うことの「楽しさ」を体験させていくことが求められてきている。「いまの自分、ありのままの自分でよい」などという現状維持の考え方は、社会を根本的にダメにすることを、もっとオトナたちは考えるべきである。人はだれもが尊重されなければならない。しかし、そのことと「ありのままの自分でよい」ということとは、まったく別のものである。「オンリーワン」は「ナンバーワン」をめざす過程のなかでこそ光り輝く。どんな分野でもよい、この部分では「自分はナンバーワンだ」と言い切れる自信が、人を育てる。自信を待たせる保育・教育のあり方が、いまほど問われている時代はない。
 
 光り輝いている人だからこそ、「この人と人生をともに歩みたい」と思うことができる。人を好きになり、その人を大切に思い、その人と添い遂げたいという「結婚観」が失われていくなかで、実は少子化のベースが広がってきている。子どもを産むことと、ものをつくること(生産)は、社会を維持していくための土台なのである。その両方が、同時に崩れてきていることが危機なのである。
 
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