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超少子化を語る 1
育児の負担 社会で背負おう 猪口 邦子 少子化相 |
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読売新聞2006年1月4日付
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くれよんくらぶ709号
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| 「親が背負いきれない育児の負担は、社会全体で背負う必要がある」。猪口邦子少子化・男女共同参画相は、加速する少子化・人口減への対策として、総合的な育児支援の重要性を強調した。(聞き手は東京本社社会保障部長・小畑洋一) |
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社会保障給付費の70.4%は高齢者向け
児童・家族向けは3.8%に過ぎない |
| ――担当大臣になって2か月、最も強く感じているのはどんなことか。 |
| 「若い世代が、育児で大変な思いをしているということ。2005年の『少子化社会白書』でも取り上げたが、収入が増えない中で、育児費用などの経済的負担は大きい。大変な生活をしていても、若い世代は声を上げないから、政策に反映されにくい。だから、今は彼らと対話する時だと思っている。子育て世代に寄り添う姿勢なくして、少子化を論じても意味がない。そのうえで重要なのは、膨大な政策の海の中で少子化対策をどう浮き上がらせるかだ。関係者が危機感を共有する必要がある」。 |
| ――「超少子化」の背景にあるものは何か。 |
| 「仕事と育児の両立支援、育児への経済的支援が不十分だ。育児休業のメニューはあっても、本当に使いやすいかどうかが問題で、働く母親の7割は第一子の出産を機に職場を去っている。家庭か仕事か、という厳しく不幸な二者択一を迫るやり方を改めなければならない。育児休業のとりやすさ、職場復帰後の短時間勤務、柔軟な働き方がカギで、経営者の認識の構造改革が必要だ」。 |
| ――日本は、育児分野の公的費用負担が少ないという指摘もある。 |
| 「そういう政策の偏りも見直すべきだ。社会保障給付費の70.4%は高齢者向けに使われ、児童・家庭向けは3.8%。給付の1%分を移すだけで、約8000億円の財源が出る。高齢者の方にもう『少し自立して働いてもらい、困っている孫の世代に予算を振り分けて』と言ったら、嫌という方は少ないのではないか。また、見過ごせないのは、安心して安全な環境で子育てができないという状況だ。最近は、殺人など子供が被害に遭う事件が増えている。『今は良い時代じゃない』という若い世代のつぶやきは重い。担当大臣としてスクールバスや放課後の待機スペースの導入などの対策を提案している」。 |
| ――少子化が進むことの問題点は何か。 |
| 「経済成長の鈍化、税や社会保障の負担増、地域経済の活力衰退など、予想を超えた残念な事態が起きる可能性がある。労働力人口の減少に対して、当面は高齢者雇用などで乗り切れるかもしれないが、その先の将来のことまで考えると、抜本的な取り組みを行う以外に解決策はない」。 |
| ――これまでの少子化対策を、どう評価するか。 |
| 「政策には、それぞれの時代に軸になるものがある。外交安保や経済競争力強化が最重要だった時期があり、その後は構造改革を進めるということが軸になっているのが、少子化対策など社会政策の充実だ。待機児ゼロ作戦など、推進しなければならないことはやってきたが、対症療法ではうまくいかない対面もあった。最近は、少子化対策の優先順位が、急ピッチで上がってきている」。 |
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男女共同参画に基づく対策が大事
「産めよ殖やせよ」の復古調ではない |
| ――今後の対策を検討する上で大切なことは何か。 |
| 「まず、6月の『骨太の方針』で、少子化問題を最優先課題と位置づけて欲しい。そういう認識を予算にも反映させたい。特に重要視しているのは、自治体の取り組みだ。保育の充実や、育児休業取得促進、孤立しがちな専業主婦への支援など、地域の実情に応じた個別の事業を通じて、若い世代を助けることができる。大事なのは、男女共同参画に基づく対策であることで、『産めよ、殖やせよ』の復古調ではない、ということ。首長の陣頭指揮で優先的に予算を組んで欲しい」。 |
| ――対策の拡充には財源が必要だ。育児保険構想や消費税の活用についてどう考えるか。 |
| 「新たな財源は考えていない。歳出削減を進める中で、様々な努力が可能になると思う。給付のパイを広げるより、配分を調整する仕組みを考えることだ。政策の優先順位を十分検討してもらう中で、財源を確保していきたい。英知の出しどころだ」。 |
| ――「男女共同参画は少子化対策にならない」という指摘には、どう答えるか。 |
| 「内閣府の男女共同参画会議がまとめた資料によると、女性が働きやすい国では出生率が高いという傾向がある。国内の意識調査でも、『少子化で重要なもの』として、『休業・短時間勤務』『出産後の再就職支援』などをあげる女性が多い。そもそも日本は、女性の登用率が低く、男女間の賃金格差が大きいなど、働きやすい環境ではない。仕事と家庭の両立支援、出産後のカムバックを支援を充実すれば、社会に再び戻ってくることができる。あたたかい支援ができる職場改革で、女性が子どもを産みやすくなるのは確かだ」。 |
| ――「国のために子どもを産むわけはないので、『少子化対策』はピンとこない」という声もある。 |
| 「子どもはまず親にとっての宝物なので、親は多大な育児負担をいとわない。だが、子どもは同時に国にとっても宝物なのだから、親が背負いきれない、親でなくても背負える負担は、社会で背負ってもよいのではないか。『国のために産んでください』と言っているわけではない。産みたいのに産めないでいる人に、産むためのお手伝いをしましょう、というのが私たちのメッセージだ。だから、出生率の上昇だけを目標にしているわけではない。多くの人が、日本人として生まれ、豊かな時代に育ったという経験をして、続く世代に伝えて欲しい。政治、政府はそのためにある」。 |
| いのぐち くにこ |
| 1952年生まれ。上智大学卒。米国エール大学大学院博士課程修了、政治学博士。上智大学法学部教授、軍縮会議日本政府代表部特命全権大使などを経て05年10月から現職。 |
| ● 出生率と「少子化」 |
| 一人の女性が生涯に産む子ども数の推計が「合計特殊出生率」で、日本では2.1程度下回ると人口が減少に向かうとされている。国内では1975年以降、2.0を切る状態が続いていたが、89年に1.57ショックまで低下、「丙午(ひのえうま)」の年で例外的な低さの66年(1.58)を下回った。この「1.57ショック」がきっかけで「少子化」という言葉が使われるようになり、92年の国民生活白書にも登場した。出生率はその後も低下傾向が続き、2004年には1.29となった。05年版「少子化社会白書」は、現状の日本を「超少子化国」と呼びかけている。 |
| 「世直し」と一緒に |
| 「どうしても産んでください、と言っているわけじゃない」「出生率の目標値なんて、あり得ない」。弱気とも取れる言葉だが、あるべき少子化対策とは、そういうものだと思う。 ライフスタイルが多様化する中、個人の選択である出産に、国の政策がどこまで関与できるかは、難しい問題だ。だが、多くの人たちが子供を持つ気になれない、持ちたくてももてない社会は、どこかゆがんでいる。育児との両立が困難な仕事環境、若者の自立を阻む様々な格差、子どもへの安全への不安…。そういったゆがみをただすことが、出生数減少の歯止めにもなるのではないか。このような「世直し」と、少子化・人口減に対応するための制度改革を同時に進めることが、われわれの責任だと感じた。(小畑) |