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『次世代育成』への視点
多様性を基に"たくましさ"練磨 |
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聖教新聞2006年1月4日付
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くれよんくらぶ718号
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| 2005年の国勢調査の結果(速報値)から2005年10月の日本の総人口は1億2775万人で、2004年の10月に比して、1万9000人減少したと発表された。厚生労働省が昨年12月22日に発表した2005年の人口動態統計では、出生数が死亡数を下回ったこともわかった。つまり、少子高齢化がさらに加速的に進行することが予測されている。このような時期であるからこそ広い意味での「次世代育成」を考えることが重要であろう。 |
| 従来、「次世代育成」というと、「後継者育成」や「青少年育成」を指すことが多かった。ところで、私は「次世代育成」という現象を「年長者から年少者へ、上司から部下へ」という従来型に加え「同世代者から同世代者へ、年少者から年長者へ、同僚から同僚へ、部下から上司へ」など多様な育成課程について、注視することが重要である。さらにこのような人間と人間の間での学び合い、育ち合い、教え合いのみならず、自然と人間との間の交流や、モノと人間との間の交流を含めて、人間生活を長期展望にたって考え、多様にデザインすることが必要だと思っている。 |
| 可能性を引き出す |
| 生物としてのヒトの個体は、成長し、変化しつつ、死を迎える。その間、人間社会の中で、さまざまな体験を重ねつつ、一人ひとりの個性が形成される。「育成」という人間社会での営みは、一人ひとりの人間が、潜在的にもっている可能性をプラスの方向に引き出し、伸ばすことである。 |
| 宮下充正放送大学教授は「人それぞれで、"たくましさ"のレベルは異なるが、どんな人でも努力することによって、これまでのレベルよりは"たくましく"なることは可能である。・・・・・・"精神的たくましさ"は、自分自身の度重なる"失敗"、他人からの"いやがらせ"、"いじめ"に対して深刻にならないように対応できる"受動的たくましさ"である」といい、さらに「能動的たくましさ」は「目的達成のために、すばやく、力強く、あるいは、ねばり強く行動できる"たくましさ"である」という(『次世代育成を考える』放送大学教育振興会刊、2003年、71ページ)。 |
| このような「たくましさ」の練磨は、幼少年期において、すこぶる肝要であるが、すべての年齢を通じて疾病の有無、障がいの有無にかかわらず、必要かつ有用なものである。若いリハビリの専門家が、高齢者のリハビリを担当するとか、家族が、高齢者や障がい者を散歩につれ出すといった行為も「たくましさ」を育てていることになる。 |
| ここでさらに着目するべきことは、リハビリ専門家の若者や、世話をする側の家族が、人間としてどのように育ちつつあるかという点である。適度の休養・反芻(はんすう)の時間をもつことによって、世話をする側の「たくましさ」の増進が可能となることも忘れてはならないと思う。 |
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青少年の意見や感性が大事
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| 人の話に耳を傾ける寛容さ |
| 「子育て支援」や「青少年の育成」については、従来にも増して、随所で多くの論者が語られるであろう。私が強調したいのは、「一つの類型」に方向づける「次世代育成」ではなく、「多様性が社会の活力の源である」という前提に立って、専業主婦のいる家庭、共働き家庭、単身家庭などの子育て支援が重要であり、「青少年育成」に関しても、若者が希望をもって、一人ひとりの個性を伸ばし、社会性を身につける方向での育成を行うとともに、青少年を「受け身に育成される者」とせず、今、日本社会の中の少数者になりつつある青少年が、意見や感性を社会に向けて表現できるように位置づけることが肝要である。 |
| 中高年の人びとが、新しい発想や、技術を習得する機会が増え、人生において労働者として役立つ期間を延長する可能性を高めることができる。つまり、大いに働き、税金を納め続ける中高年を増やして、この少子高齢社会の過渡期を乗り切る一助とすべきである。そのためには、職場において、途中入社の新人や若い者が年長者や古参者を指導する場合、抵抗がなくなるような、雰囲気づくりが必要であろう。 |
| 次世代育成という観点に立つならば、地球上の人類の生存と他の生物や資源の持続可能性とを総合的に工夫することが大きな課題である。それは、言論・表現の自由と社会的公正が保証されている社会の存在を必要とする。同時に対立する諸意見を前にして、落ち着いて調整できたり、自分と全く反対の意見を持っている人の話に耳を傾けられる寛容な生活の姿勢、心の姿勢を持つタイプの個人を次世代として育成することが求められている。70歳の人が90歳になったときに、頑固さの度合いや自立能力の減退が、少なくなるような刺激を、より若い人たちが工夫することが期待される。 |
| 次世代育成のこれからは、多様な特徴や発想をもった人びとが、互いに切磋琢磨したり、励まし合ったり、慰め合ったりしながら進めていくことが課題となるであろう。 |
| (城西国際大学大学院客員教授) |
| 原 ひろこ=はら・ひろこ |
| ソウル生まれ。東京大学大学院文学修士課程修了、米国ブリンマー大学PhD(人類学)取得。専門は文化人類学・女性学。お茶の水女子大学、放送大学を経て現職。主な著書に『ヘアー・インディアンとその世界』『女性学ことはじめ』『子どもの文化人類学』など。 |