病児保育室
手厚い看護で働く親をサポート
経営厳しく9割が赤字
東京新聞 2006年1月10日付
くれよんくらぶ729号
 
 朝、子どものおでこに手を当てると「熱がある!」。風邪だ、さあ困った。保育園は預かってくれないし、夫婦とも仕事は休めない―。そんなときの強い味方、「病児保育室」が全国で急増している。だが、ただでさえ体調の悪い小さな子を初めての場所に預けて大丈夫?診察は?いくつかの施設をのぞいてみた。(原 尚子)
 
◎ 医療機関併設
 東京都大田区の小児科医院2階にある病児保育室「うさぎのママ」。午後5時すぎ、仕事を終えて駆けつけた公務員女性(40)は「ただいま、どうだった?」と、預けていた二男(1つ)を抱っこした。感染症胃腸炎による下痢症状も快方に向かっていたが、女性は保育士か食事や遊びの様子を聞き、ホッとした表情。
 
 「ここは朝と夕方、1階で診察が受けられるし、昼間も看護師さんが見にきてくれるので安心。本当に助かります」。子どもが病気になると以前は、会社員の夫と交代で休むか、母親に来てもらっていたが、今は月1回のペースで利用している。
 
 現在、厚生労働省の「乳幼児健康支援一時預かり事業」として認可されている病児保育室は、全国で約500施設。「うさぎのママ」のような「医療機関併設型」が6割近くを占めるほか、「保育所併設型」「単独型」など、形態はさまざまだ。1992年度末には16施設だったのが、国のエンゼルプランなどの後押しを受けて急増した。
 
国は「3年後に1500施設」まで増やす計画
◎ 1日2500円程度
 全国病児保育協議会(事務局・大分市)の藤本保事務局長は「病児保育は究極の育児支援策」と強調する。自身が院長を努める小児科病院に来た病気の子どもを、看護師用の院内で随時に預かったのをきっかけに、病院に病児保育室を開設。「目の前に困った親子がいたら、断れません。ニーズの高まりは日々感じている」と話す。
 
 医療機関の場合、利用者はまずかかりつけ医を受診し、医師連絡票をもらった上で、施設を予約する。隔離室が整備されたところなら、麻疹や水痘などの感染症でも受け入れてくれる。施設には定員4人に対して看護師1人、保育士1人が常駐しており、連絡票をもとに食事の準備や投薬などを行ってくれる。
 
 驚くのは利用料の安さだ。施設によって異なるが1日2500円程度。これはベビーシッターなら1時間で消えてしまう額。運営費は国と自治体、施設の三者で負担するが、国からの補助金は医療機関方で年間約670万円程度と、二人分の人件費にも満たない。藤本事務局長は「9割が赤字。多くは病院などの別収入から補てんしているところばかり」と言う。
 
◎川崎では委託
 こうした中、数少ないが自治体が赤字分を全額負担する施設もある。川崎市多摩区の「エンゼル多摩」(池田奈緒子施設長)は、市から業務委託された医師会が運営する「単独型」。医師会を通じた嘱託医が毎日交代で回診する。入り口から別々の隔離室や、定員12人の個々の病状に合わせた食事の提供など、手厚い看護が受けられる。
 
 働く母親の増加で病児保育のニーズは増すばかり。わが子が通う保育園では37.5度を超えると登園できない。休みづらいときに限って熱を出す子どもを恨めしく思いつつ、ベビーシッター探しで大慌ての朝も。病気を治しながら1日を過ごせる施設が近くにあれば、安心して預けられるが、まだまだ不足しているというのが実感だ。国の「子ども・子育て応援プラン」は病児保育室を200年度に約1500施設まで増やす計画。
 
 「うさぎのママ」の大川洋二院長は「『病気のときぐらい親が見なきゃ』といわれがちだが、実はそんなときこそ専門家のケアが必要。日中施設に預けて適切な処置をしてもらい、夜は家に帰って親と安心して眠る。そういうデイケアセンターのような役割が、子どものためにもいい」。「エンゼル多摩」の池田施設長も「病気のときに何を食べさせたらいいかわからないというお父さんに、メニューや薬の飲ませ方を教えたり、子育て支援センターのような役割もしたりしていきたい」と話している。
 
【ふぼれん事務局長 菅野司のコメント】
 大田区内には現在4ヵ所の病児保育室がある。「エンゼル多摩」のように手厚くはないが、保育園に通う家庭にとってはなくてはならない存在だ。東急線田園調布駅前には「病後児保育室ルームアリエル」が、東急線矢口渡駅前には「病児保育室うさぎのママ」が、駅には少し距離があるが中央7丁目旭通には「キッズメディカルステーション」が、東急線久我原駅前には「病後児保育室ライオンのこどもべや」がある。施設ごとの年間利用者数の公表はまだないが、評判は上々のようである。4施設とも京浜東北線以北にあるので南側の設置が待たれる。
 
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