「地域力」で若い世帯支援
主婦が保育ママ 放課後活動にボランティア
東京新聞2006年1月31日付
くれよんくらぶ741号
 
 少子化がとりわけ深刻な東京都。一人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」が1.0を割り込んだ区も多い。ところが23区で唯一、江戸川区は、出生率が1.32と、全国平均(1.29)を上回る。何か少子化を解消するヒントがあるのだろうか? 岩岡 千景
 
 江戸川区の23区最高出生率 なぜ?
「今日は2回もウンチしました。いいウンチでしたよ〜」。江戸川区南小岩のマンション。自宅で子どもを預かっている「保育ママ」の半田直子さん(54)は夕方5時、1歳2ヵ月の男児を迎えに来た会社員の母親(38)に、男児の1日の様子を報告した。「帰るよー」。母親の言葉に、男児はそっくり返ってイヤイヤをする。母親が仕事に出ている間、もう1人の男児(1つ)と楽しく過ごしたのだ。「たくさんコミュニケーションが取れるから、子どもの心が安定するし、病気もあまりしない」。母親は、保育ママの良さをそう語る。

 
 半田さんは7年前まで企業保育所に勤務。3人の子も育て上げており、育児について教えてもられることも多いという。同区は保育ママ制度を、1969年に導入。現在の認定者は217人と、2けたを超えない他区に比べて断然多い。原則ゼロ歳児が対象で402人が利用。平日午前8時半から午後5時までが基本的な保育時間で、月々の利用料は雑費込みで1万7000円と安い。
 
 保育ママは子育てを終えた40代、50代の主婦が多く、一人が預かる子どもは平均2人。 世田谷区で昨年、保育ママによる虐待事件があったが、江戸川区では「保育ママの会をつくって横のつながりを持ち、職員も定期的に訪問して、そうした危険に陥らない態勢を整えている」(子ども家庭部保育ママ係の森澤元主査)という。
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 少子化の進行が深刻な東京で、江戸川区は合計特殊出生率が、区平均の0.96、都平均の1.01も大きく上回る(表参照)。荒川左岸に位置し千葉県に隣接する同区には毎年、約3万7000人が移住。その多くは20代、30代の若い世帯だ。また区が3年前、就学前の子どもの保護者3000人に行った調査では、実に94.9%が「子育てしやすいまち」と答えている。
 
 2005年度版の少子化社会白書も、同区が若い世帯を引きつけていることに注目。区独自の施策として、保育ママ制度や、私立幼稚園保育料の月額2万6000円の補助制度、放課後の児童に学校内で活動の場を提供するすくすくスクール事業などを紹介した。「区の子育て支援策は『子どもへの直接的な施策』を重視するとともに、地域力を活用しているのが特色。代表例が保育ママやすくすくスクール」と、区子ども家庭部の山崎求部長は話す。
 
 保育ママの大半は、研修を受けた地域の主婦。本年度から全73校に広がった「すくすく」でも、保護者や地域のボランティアが「サポートセンター」を組織して地域の人材を発掘。将棋や折り紙、琴など豊かな経験を子どもに教える機会をつくっているという。
 
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 ただ区立保育園では、ゼロ歳児の受け入れをしていない。ゼロ歳児を民間の保育施設に預けて働いてきた母親からは、こんな声も。「保育ママが多様な支援策の1つならいいが、選択肢はなく、むしろ赤ちゃんは家庭で育てるべきという子育て神話の押しつけも感じさせる。働く母親にとっては、支援策が充実しているとはいえないと思う」。「すくすく」の現場では、地域力の活用に苦労しているところもあり、若い世帯を引きつけるのは、ほかにも大きい理由があるようだ。
 
 「超少子化国」といわれる今の日本。子どもを持つことを迷いなく選択できる女性は、どれだけいるでしょう。安心して出産、育児できる社会をどうつくっていくか。企画「産みたい育てたい」(掲載随時)で考えていきます。
 

●東京都23区の合計特殊出生率(2004年)
@江戸川区    1.32
A足立       1.22
B葛飾      .1.19
C江東       1.12
D荒川       1.08
E墨田       1.06
F練馬       1.06
G板橋       1.04
H大田       1.03
I北        0.97
J台東       0.95
K品川       0.88
L中央       0.85
M千代田     0.82
N新宿       0.82
O文京       0.81
P世田谷     0.78
Q港        0.78
R豊島       0.76
S中野       0.75
○21杉並     0.75
○22目黒     0.72
○23渋谷     0.71

 
【事務局長 菅野 司のコメント】
 江戸川区の「保育ママ制度」に対しては賛否両論が存在します。記事はその辺のところを調査せず、1面的に「保育ママ制度」がすばらしい制度であるかのような書き方をしているところに、問題があります。江戸川区は23区で唯一、保育園での「ゼロ歳児保育」を実施していません。保育ママ制度もそれなりによいところがありますが、しかし、制度はあくまでも「保育園の補完」でしかありません。保育や教育のように、子どもの発達・支援にかかわる事業は、やはり専門的な教育を受けた専門職が中心となって運営することが望ましいことは、だれもが指摘していることです。江戸川区に住む若い子育て世帯は、「保育園」か「保育ママ」かという選択肢すら与えられていません。問題は「すくすく」にもいえます。江戸川区の出生率の高さは、ひとえにマンション価格に起因しています。住宅費が安いということは、若い子育て世帯が、生活をする上での決定的な要因となります。もし23区で子育て環境調査を実施したら、江戸川区が最下位となることは間違いありません。そのぐらい江戸川区の保育施策・学童施策は問題を含んでいるのです。
 
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