こどもの肥満
松尾クリニック院長 医学博士 松尾喜美子
公明新聞2006年1月27日付
くれよんくらぶ743号
 
 生活習慣病の急増に大きく関与している肥満。たかが肥満と思っていたところが、重大な病気の引き金になるケースも少なくありません。最近、子どもの間に肥満が増えてきています。食生活の変化が大きな要因ですが、正確な知識を持った上で、家庭における日ごろからの注意が必要です。そこで今回は、「子どもの肥満」を取り上げてみました。
 
思春期での症状は70〜80%が成人に移行
高度肥満児は過去30年間で3倍に
◆ 定義
 肥満とは、「身体を構成する成分の中で、脂肪組織が過剰に蓄積した状態」と定義されています。
脂肪組織が過剰になるには、脂肪数が増加する増殖型、一つ一つの細胞が大きくなる肥大型、両者が混在する混合型の3つがあります。小児期は身体が発達する時期ですから、脂肪細胞も増えやすく、いったん増加した脂肪細胞数は減らないので、減量しても、またリバウンドしやすくなるのです。
 
 肥満は大きく単純性と症候性とに分けられますが、後者は病的な原因で起こる肥満のことで、ほんの数%しかありません。単純性肥満が起こるのは、身体で使うエネルギー以上の食物を摂取してしまい、それが脂肪となって体内に蓄積され、肥満が進むのです。肥満には、筋肉と皮膚の間に脂肪が多い「皮下脂肪型肥満」、内臓の周りに脂肪が多い「内臓脂肪型肥満」の2つのタイプがあります。後者のように内臓に脂肪がたまると、糖尿病、高血圧症、高脂血症になりやすく、その結果、動脈硬化が進みやすく、心臓病や脳血管障害が起こりやすくなるという特徴があります。ですから、たかが肥満といっても、重い病気の原因になる、そんな肥満の恐ろしさを十分に認識してほしいと思います。
 
 一般的な肥満度の目安として、世界的にBMI(体脂肪量を表す)という指数が用いられています。日本では、25以上が肥満とされていますが、WHO(世界保健機関)の基準では、BMI25以上30未満は、前肥満に分類されます。これは、日本の場合、軽い肥満でも疾病率が高いとのデータがあるからです。肥満の程度が、25〜30の軽症肥満でも心配されるのは、内臓脂肪型が多く、生活習慣病(糖尿病、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝など)になるリスクが増大することです。BMI35以上になると、皮下脂肪型が加わり、この生活習慣病に加えて睡眠時無呼吸症候群、心不全や関節障害などが起こりやすくなります。
 
内臓脂肪型は糖尿病、高血圧症などを誘引
◆ 小児肥満
 この、おとなの病気だと思われてきた生活習慣病を引き起こす肥満症が、近年になって子どもたちの生活様式に伴う食生活の乱れ、運動不足、種々のストレスの増加によって、小児期メタボリック症候群の増加として問題になってきました。
 
 肥満児の中で、高度肥満(肥満度50%以上)が、過去30年間で3倍に増加。小学生の糖尿病も、この20年間で8倍に増加しているとの報告もあります。そして、肥満も乳児期のものの大半は自然に解消しますが、7歳くらいのそれでは40%、思春期のそれでは70〜80%が成人肥満に移行するともいわれます。
 
◆ 原因
 子どもの肥満の主な原因としては、まず、生まれつきの体質(遺伝)があります。耳にされたことがあると思いますが、両親が肥満している子どもが肥満になる割合は60〜70%。片方の親が肥満している時の割合は30〜50%。両親ともに肥満のない場合は10%というデータがあります。ですから、親が肥満していると、子どもが肥満する可能性は高くなります。というのは、肥満しやすい体質が親から伝わっている上に、その家庭の食生活も肥満になりやすい食生活になっているわけで、さらに肥満する可能性が大きくなるのです。
 
 最近の研究では、日本人は欧米人に比べて遺伝学的にも、倹約遺伝子(肥満遺伝子)を持っている人が多く、脂肪を燃焼させる働きが小さいということも判明しています。つまり、日本人は"省エネルギータイプ"が多いのです。
 
学童期以降は飽食の習慣を改めよう
◆ 予防
 肥満の予防には、まず、親からもらう体質は別として、問題となる食事を見直すことです。少なくとも学童期以降は、飽食の習慣を改善したいものです。@脂っこい食べ物が好きA甘いスナック菓子や清涼飲料水、アイスクリームなどが好きB間食をするC夜食が多い――などのチェックをしてみましょう。心あたりがあれば努力し抑えることが重要です。【下の表参照】
 
 次に、生活様式の変化として、運動不足があげられます。小学生から高校生までの男女児が、テレビゲームをする時間を調べたところ、1日平均で3時間半。さらに生活リズムが夜型へ移行し睡眠不足を感じている児童は、半数以上との報告があります。
 
 また、糖尿病の患者数は脂質の摂取率増加と、自動車保有台数の増加とともに、数が増加しているという調査結果があるほどです。今、子どもたちを取り巻く社会環境、生活様式、食生活の変化が指摘されています。食べ過ぎや偏食による栄養バランスの乱れ、さらに動物性脂肪の摂取が増え続け、食生活が欧米化しつつあるといわれます。これらのことから、一生の間のヘルスケアとして、肥満の形成期である学童期を中心に食生活を含めた生活習慣の正しいあり方を考え直すことは、大変に重要なことです。
 
学童肥満治療法における基本確認事項
1. 毎食1人分を盛り付けて食べ始める
2. 1日3食、食卓で食べる
3. 食品の大体のカロリーを目分量で知っておく
4. 給食の牛乳(200ml)以外はノーカロリー飲料
5. パンには何もぬらない。サラダには何もかけない
   (バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、
   ジャム、アメ、チョコレートなどは食べない)
6. テレビゲームは1人で自分の家で
7. 体重測定は週に1回、朝に測る
(朝山光太郎「小児科」より)
 
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