「格差拡大」ホントにないの?
東京新聞2006年1月26日付
くれよんくらぶ753号
 
 小泉首相の施政方針演説に対する各党代表質問では、「格差拡大」など小泉改革の「影の部分」に対する懸念が噴出した。行き過ぎた競争主義によって、「勝ち組」と「負け組」に二極化していることへの危機感を表明したものだが、首相自身は認めていない。2001年4月の小泉政権発足以降、社会格差は実際に拡大しているのか。――各種統計を基に検証した。   (高山晶一)
 
正規従業員減る一方 「貯蓄なし」過去最多
「ジニ係数」根拠 かわす首相…でも裏付け続々
 前原誠司・民主党代表「小泉首相の在任中に、所得の不平等指数であるジニ係数は0.47から0・50に拡大した」首相「世帯構造の変化の影響を考慮すると、統計データからは所得格差の拡大は確認されない」23日の衆院代表質問。質問に立った前原氏は、小泉改革が格差拡大を引き起こしたとして、首相の見解を激しくただした。
 
 所得格差を表す「ジニ係数」は、数値が大きいほど格差が大きいことを示す。ただ、調査主体によって数値が異なり、単身世帯の増加や高齢化の進行によっても上昇する傾向がある。前原氏の指摘は、厚生労働省が発表した数値。しかし、内閣府が最近まとめた試算では、01年に約0.28だったジニ係数は04年は約0.27とむしろ縮小している。首相は内閣府の数値を根拠に、前原氏の指摘は見かけ上の格差拡大にすぎないとして、追及をかわしたといえる。
 
 しかし、ほかの経済指標では、格差拡大は顕著に表れている。正規社員として働く労働者の数は、01年に約3600万人だったが、05年は約3300万人と300万人も減少。逆に、パートや派遣社員などの非正規従業員は200万人以上増えた。国際競争力強化を目指す経済界の要望を受け、政府が雇用形態の多様化を進めてきた結果とみられるが、正規従業員と派遣社員らの賃金格差は歴然。派遣社員から正規従業員になりにくい傾向も統計上表れており、二極構造の固定化につながっている側面は否定できない。
 
 貯蓄面でも格差は拡大している。日銀世論調査によると、「貯蓄がある」と答えた世帯は、1990年代後半までは90%台前後で推移していたのが小泉政権になって急落し、2005年は73.3%。逆に「貯蓄がない」と答えた世帯は23.8%と過去最多となった。生活保護受給世帯も、01年4月は約78万世帯だったのが、05年10月は約104万世帯と、3割以上増えている。
 
 首相が根拠にしている内閣府のジニ係数にしても「調査のサンプルが少なく、格差が縮小しているとも判断できない」(同府担当者)。格差拡大を否定する確たる数字は今のところなく、小泉改革の功罪を問う国会論戦が今後、さらに激化するのは必至だ。
 
☆ジニ係数
 国民の間に存在する所得格差の程度を示す指標。世帯数や所得を基に算出する。0に近いほど格差が小さく1に近いほど大きい。厚生労働省や総務省が数年に1回、独自の調査で計算。総務省調査では1979年以降、係数は一貫して上昇している。
 
【ふぼれん事務局長 菅野 司のコメント】
 この記事が出たあと、小泉首相は「格差が拡大していることを国会で認める」発言をしました。実際、格差の拡大は時間が経過するごとに広がっているのは、だれもが感じていると思います。大田区を見ても、就学援助を受ける家庭は年々急増しています。新聞記事でも、「格差拡大が学力の格差を生み出している」との記事も出てきました。
 
 社会をゆたかにするためには、経済の活性化が何よりも重要です。確かに、国際競争力を強化することも大切だと思います。しかし、そのために欧米型の雇用制度(勤務評価)に移行することで、格差が拡大していくばかりです。短期的には効果や成果があるように見える施策でも、長期的には国を滅ぼす結果になるかもしれないという施策を、経済界はとっているように私には見えるのです。目先の利益に目が奪われて、格差が拡大していけば、その後にやってくるのは「アメリカのような、すさんだ、不安定な社会」なのだと思います。
 
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