子育て支援の課題
障害児の親となる可能性は誰にでも
公明新聞2006年2月25日付
くれよんくらぶ765号
 
障害を有した子どもを持つ家庭が抱えるいちばんの悩みは、子どもの教育だろう。学校への送り迎え、放課後の居場所づくり、これらとも深く結びついた親の就労問題など、子育て、教育環境は十分に整備されているとはいえない。自身の体験に基づき、「日本は米国に比べて十数年は送れている」と実感するフリージャーナリストの海津敦子さんに、障害児支援の周辺について寄稿してもらった。
 
過重な学校への送迎負担   就労問題でも大きな制約が
フリージャーナリスト 海津 敦子
国は、すべての子どもと家庭に支援を行うことを目指し「家庭と社会の連携の下で子育てを行えるようにすることを」自治体に義務付けている。改めて言うまでもないが、「すべて」ということは、障害児とその家庭も含まれている。しかし、各自治体が実施している子育て支援の状況を見ると、障害児を育てることを支援しているとは、まだまだ言いがたい状況である。
 
現に、障害のある幼児の親2人に1人が、子育てに不安、負担を感じ、社会からの孤立感を募らせているという調査結果がある。また、障害児の親は、子どもがいくつになっても頑張り続けざるを得ない日常の積み重ねに、心が強いも弱いも、体力があるなしも関係なく、とてつもない疲労感とストレスにさらされ、うつ病などの心の病で通院する人が大変多い。
 
昨今、障害児を持つ親が増えている。一昔前なら命が助からなかった子どもも医学が進歩して生きることができるようになったものの、障害が残るケースも多々あることが理由のひとつだ。義務教育課程で養護学校、特殊学級、通級などで特別な教育を受けている子どもの割合から換算すると、100人の親がいたならば2人は障害児の親になる。通常学級に在籍する障害のあると思われる子どもを入れれば、8人は障害児の親だという人もいる。
 
障害児の親は、特別に選ばれた者が特別になるのでなく、誰もが障害児の親になる可能性を持っている。将来の自分、きょうだい、子ども、孫、いずれも障害児の親にならないとは誰にも保証できない。
 
少子化対策として、誰もが安心して子どもを産み、子育てに伴う喜びを実感できるように環境整備をすすめるのであれば、障害児を育てることも本気で支援していくのは当然であろう。「障害のある子どもを産んだばかりに子育ても、自分の人生もつらいだけだ」と親が嘆く実態があるようでは、真の少子化対策にはなっていない。
 
発達障害者支援法では、家族への支援の重要性も指摘し、家族へ支援を適切に行うよう努めることを盛り込んでいる。しかし現状は生かされていない。せっかくの法律なのにもったいない。例えば、どの自治体も子育て支援の環境整備の中、とりわけ「子育てと仕事の両立のため」の支援を掲げている。が、障害があると保育園や学童保育へ入園しずらく、親は就労ができない。運よく在籍できても、延長保育や週6日の保育を認められなかったり、学校と学童保育の移動を親に任せられたりと、実質、就労の幅もパート勤務などに狭められている。
 
放課後など自宅以外の居場所づくりが必要
少子化対策の重要な柱に
実は、障害児のいる家庭の離婚率は非常に高く、一人親家庭が数多く存在する。障害児を育てるということは、夫婦間で、その子に対する気持ち、育て方のありよう、障害への対応の違いが露出する。その中で改めて絆を強く結びなおす家族がいる一方、様々な違いのズレをうめられぬまま、夫婦関係を解消することも多々あるからだ。
 
なので、経済的に安定した生活を確保する上でも、障害児の親の子育てと仕事の両立も重要課題だ。ところが残念なことに、そうした現実を行政は理解できていない。背景には、「障害のある子どもの親は、障害のある子どもを預けてまで働いたりしない」という意識が、いまだに役所に根強いことがあげられる。
 
障害児を育てることへの支援は、就労問題にかぎらず乏しい。個々の校区に特別な教育を用意できない教育委員会の都合で、障害児は校区外の学校に通学せざるを得ない。そのため、きょうだいと違う学校になるケースも多いが、運動会等の行事を教育委員会が調整する配慮さえしないので行事が重なり、子どもが寂しい思いをするのもざらだ。
 
さらに障害児は、夏休み等に自宅以外に過ごす居場所がないことがよくあり、親子の密着度は高くお互いに相当なストレスがかかる。きょうだいの保護者会にも出席できない……等々、きょうだいに時間も心もかけてやるゆとりもない。親は自分の人生をあきらめることが障害児を育てることだと思っている人も多い。親から虐待を受けた子どもの5割以上に、何かしら発達に遅れがあると言われることからも子育ての厳しさが伺われる。
 
繰り返すが、誰もが障害児の親になる可能性はある。障害児を育てる支援が今の状況で、安心して子どもを産む選択をどれほどの人ができるだろうか。親にとってもたった一度の人生。誰もが生まれてきて良かったと思える人生を味わいたいもの。そんな当たり前の原点に立ち戻って、子育て支援を行っていかれるかを行政は問われている。
 
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