くれよんくらぶ821号
早急な保育園民営化違法
「横浜市に賠償命令・横浜地裁」
東京新聞5月23日付
 
 本日の東京新聞朝刊1面大見出しで、「早急な保育園民営化違法」の記事が8段抜きで掲載されています。全文を転載します。また28面にも関連記事を掲載。28面のタイトルには「園児第1の保育を」「民営化違法性、横浜地裁認定」「保護者ら歓喜の輪」とともに、「背景に自治体の財政難」が。
 
 タイトル「早急な保育園民営化違法」「横浜市に賠償命令・横浜地裁」リード文は「横浜市の4つの市立保育園の民営化をめぐり、保護者と園児ら67人が「性急な民営化は園児の発育に悪影響を与える」として、市に民営化取り消しと損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、横浜地裁であった。河村吉晃裁判長は、「早急な民営化は裁量の範囲を逸脱、乱用したもので違法」と指摘し、在園園児の保護者28世帯に1世帯あたり10万円、計280万円の支払いを命じた。
 
「取り消し請求は棄却」(なか見出し)
 原告側代理人によると、公立保育園の民営化をめぐり、行政手続きを違法と認定したのは全国で初めて。損害賠償を認めたのは今年4月の大阪高裁判決に次2例目。判決は、民営化取り消し請求については、4園が廃止されてすでに2年以上が経過していることなどから、「取り消すのが原則だが、無益な混乱を引き起こしかねない」として請求を退けた。また卒園児の保護者らの訴えは却下した。
 
 判決によると、市は2003年4月、港南区など4保育園の民営化を発表。同年12月、民営化に向けた条例改正案が市議会で可決され、市は04年4月1日から民営化を実施した。河村裁判長は、民営化自体は「行政の一つの選択肢で違法とまでは言えない。」とした。しかし、市が1年後の民営化を突然公表したため、保護者らが反発し、4園とも協議の場を設置できなかったことや、民営化への引継ぎ期間を3ヵ月間しか設けなかったことについては「特別に民営化を急ぐべき事情があったとは言えず、保護者の利益を尊重したものとは到底言えない」と述べ、違法性を指摘した。
 
 保護者らは「拙速な民営化で保育士らの人件費が削減され、保育の質が低下した。園に行きたがらなかったり、体調を崩す園児が出た」と主張していた。だが判決は「園児の年齢を考えると、精神的な苦痛を園児共通のものと把握することは困難」として園児らの賠償請求は退けた。判決後、同市役所で会見をした原告側の海渡雄一弁護士は「違法と認定したことは画期的だ。横浜市は保育園民営化政策を根本的に見直すべきだ」と述べた。
 
「横浜市子ども青年局比江島勝秀・子育て支援部長の話」
 違法とされ賠償が命じられたことは厳しい判決と受け止めている。判決を詳細に検討し、控訴するか否かも含め慎重に検討したい。
 
東京新聞の解説・・「職員引き継ぎわずか3ヵ月・・利用者軽視に警告」
 公立保育園の民営化は、国の規制緩和や自治体財政の悪化を背景に、全国に自治体で広がっている。自治体側は「民営化による効率化で、高まる保護者のニーズに応える」としている。だが「大義名分」を押し出すことばかりを意識し、利用者への配慮を欠いた拙速な行政手法に、横浜地裁の判決は警告を発したといえる。
 
 国は2000年に規制緩和し、自治体と社会福祉法人だけだった認可保育所の運営が株式会社や特定非営利活動法人(NPO法人)にも認められるようになった。厚生労働省によると、これ以降、昨年4月までに全国で計828ヵ所の保育園が民営化され、その動きは加速している。
 
 判決は、民営化自体を否定したのではない。「違法」と断じたのは、その強引な進め方だ。市は1年後の民営化を宣言し、引き継ぎ期間も3ヵ月しか設けなかった。環境の変化が園児の心身に与える影響を十分に考慮したとは言えない。
 
 あらゆる行政分野で全国的に進む民営化の流れのなかで、横浜市の中田宏市長も公立保育園の民営化などを実績の一つに掲げる。しかし、その実施には市民の不安に十分に応え、説明責任を尽くさなければならないことを、判決はあらためて突きつけた。
 
[事務局長 菅野ツカサのコメント]
 横浜市で保育園の民営化に対する裁判所の判断が示された。判決の文面が掲載されていないので詳しく中身を知ることはできないが、「早急な民営化は違法」との見出しが掲載されている。保護者の理解を進めながら民営化を進める理想は、以前、大田区が示したことがあった。それは「入園してくる保護者に6年後は民営化されますが、よろしいですか」と確認をしてから入園を決定する方式だ。大田区のふぼれんではこれを、当時の部長の名称をつけて「中村案」と呼んでいる。なかなかうまい方式を考えたものだと、スタッフ一同感心をしたものだ。ところが半年もたたないうちに、その方針が撤回され、翌年から保育園の民営化が強行された。まだ、23区のどこの自治体も保育園の民営化を提案していない中での民営化の強行であった。もちろん現場は、おおもめにもめた。
 
<<戻 る