くれよんくらぶ822号
企業の高評価「責任」がカギ
社会貢献 法令順守 環境配慮
東京新聞 2006年5月7日付
 
 証券絡みの不祥事が相次ぐ中、株価だけでは測れない企業価値に対する関心が高まっている。社会貢献やコンプライアンス(法令順守)、環境への配慮などを経営に組み込んだ「企業の社会的責任(CSR)」への注目度だ。企業の取り組みを消費者に橋渡しする民間非営利団体(NPO)も登場。CSRを重視した投資も広がりを見せている。              (経済部・市川千晴)
 
関連投信利回り好調 消費者には貴重情報
◎ 株価にも影響
 住友信託銀行は、CSRに熱心な企業の株式を組み入れた投資信託を「グッドカンパニー」と名付けて販売している。今年3月末までの1年間で、株式の配当金に相当する分配金が投資額1万円当たり5,500円と国内投資のトップを記録。同社の広報担当者は「当初は顧客から『CSRは企業のきれいごとだ』と不信感を持たれた。だが、今では運用利回りの実績が評価され『良い企業は株価も強い』との認識が広がってきた」と話す。
 
 金融機関では、「グッドカンパニー」のような"CSR型金融商品"ともいえる「SRI(社会的責任投資)投資信託」が広がっている。野村総合研究所の伊吹英子主任コンサルタントは「現在のCSRは、過去にブームとなった社会貢献と一線を画し、着実に経営に組み込まれ浸透している」と分析する。法令違反を犯すリスクが低く、消費者の支持を得やすい企業は持続的な成長が期待できる。こうした投資家の見方が株価の上昇につながり、結果としてSRI投資の運用実績向上に貢献している。
 
◎花王がトップ
 金融機関に情報提供するのは、専門の調査会社などだ。SRI投資の開発も手がける「インテグレックス」は、上場企業約3600社のCSRの取り組みをアンケートで調査。この情報をもとに、ダイワSRIファンドなどが発売されている。同社は「SRIの基準は、企業経営の誠実さと透明さにある」とし、今年は花王をトップに格付けした。花王では、全国の工場で小学生親子を招いた実験を開催しているほか、消費者から寄せられた過去十年分の約80万件の意見や要望をデータベースに蓄積し、消費者相談への対応や新製品の開発に生かしている。インテグレックスの秋山をね社長は「誰かの役に立ちたいという思いは、多くの人が持っている。SRIは、自分たちの住む社会を良くしようという投資。今後はより満足度の高い商品を設計したい」と意欲を示す。
 
◎まだ成長段階
 現在、国内のSRI投信は約30本、残高ベースで約2000億円。同2兆ドル(約230兆円)を突破した米国と比較すれば成長段階だ。
 
 NPO「キッズMBA」が、今年2月にインターネット上でCSRについて調査したところ、36%(回答数1400件)が「社会貢献を含む企業情報をもっと知りたい」と答えた。キッズMBAの三坂大作理事長は「市民は企業イメージをつかみ信頼感を得たいと思うが、企業から提供される情報ではそれが満たされない」という。情報のミスマッチを解消するために近く、企業のCSR報告書やHPを分析、消費者との間を橋渡しする「社会貢献ドットコム」事業をネット上で展開する計画だ。
 
 CSRの企業相談を行う新日本インテグリティアシュアランスの大久保孝常務は、「消費者はアスベスト対策や障害者雇用など法律だけではカバーしきれない問題にも、企業に対応を求めている。この実践がCSRだ。法律の背後にある社会の要請を、経営に反映させる企業こそ強い企業といえる」と指摘している。
 
★企業の社会的責任(CSR)
 企業が行動や商品に、社会的な公正さや倫理、環境への配慮などを組み込み、株主や従業員、消費者、地域社会といった利害関係者に対して説明責任を果たし、好ましい影響を与えること。欧米で始まり日本は2003年がCSR元年とされる。競争力を高めるための経営戦略と位置付ける企業が増え、CSR報告書を発行している企業は200社を超える。
 
主なSRI投資信託
名称・愛称
販売会社
純資産残高
日興エコファンド 日興コーディアル証券など
491億円
ぶなの森 損害保険ジャパンなど
179億円
興銀第一ライフ 興銀第一ライフ
62億円
エコファンド  
エコ博士 三井住友銀行など
43億円
みどりの翼 三菱東京UFJ銀行など
30億円
あすのはね カブドットコム証券など
50億円
ダイワSRIファンド  ダイワ証券
165億円
野村グローバル 野村證券
39億円
グッドカンパニー 住友信託銀行
545億円

*純資産残高は3月末現在

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