くれよんくらぶ929号
子どもが「怒り」をコントロールするために
「好きなだけ話す時間」が大切
聖教新聞 2006年9月28日付
 
 自分の「怒り」の感情をコントロールできず、いわゆる"キレる"状態になってしまう子は相当数いると言われています。今回は、子どもたちの「怒り」に関する現状と大人のかかわり方について、香川大学大学院教育学研究科・藪添隆一教授(臨床心理士)に聞きました。
 
【目立つ「ストレス」と「未熟」】
――子どもたちの「怒り」を取り巻く状況について、どのようにとらえていますか。
 根底には、生活の中で子どもたちが抱えるストレスが多くなっているという問題があります。
その上で、子どもたちが起こしてしまった事件などを見ると、さまざまな面での「未熟さ」が目に付きます。これが"キレる"とこにつながっているのでしょう。たとえば、自分が中心でなければ気がすまず、無理やりそこに他者を合わせようとするのは、3、4歳の心しか育っていないことを示しています。この時、本人が怒るのは深い意味があるわけではなく、単なる欲求不満のためです。これが長じると、ストーカーのような行為につながります。
 
――なるほど。
 さらに、子どもたちの「表現方法」が次第に稚拙になっている印象もあります。自分の言いたいことが上手に伝えられないことにより、ますます不満や怒りの気持ちがたまっていくのですね。
 
【こまやかな感情を受け止める】
――表現力が伸びない理由は何でしょうか。
 子育てを機械にさせすぎてしまっている弊害があると思います。テレビやビデオから学ぶこともさまざまにありますが、そちらへの比重が大きくなりすぎているのではないでしょうか。子どものこまやかな感情表現を受け止めてくれるのは、やはり人間です。小さいころから、子どもが一生懸命に表現する様子をやさしく見てくれる大人の存在が、もっと必要とされていると言えます。
 
――"キレる"子どもには、どのように接していくべきでしょうか。
 ひとつには、後先考えずに爆発してしまうので、「よく考えなさい」と、子どもが物事を考えるよう訓練をすることです。そして、も少し前段階の対応として、自分の中にストレスがなるべくたまらないよう、上手に自分の気持ちを表現させる工夫が大切でしょう。そのためには、まずは子どもの好きなように、好きなだけ話をさせる時間を作りましょう。子どもにとって、おしゃべりすることは「表現の練習」でもあるのです。子どもは、話している間にスッキリしたり、気持ちを整理できたりします。そうなれば話すことが好きになるでしょうし、たくさん話せばますます表現力が付いていきます。時には、気持ちを絵に描かせてみるなど、表現方法に工夫をするのもいいかもしれません。
 
【話を聞いてもらう工夫を】
――大人の側にも忍耐力が求められますね。
 そうです。子どもが表現力やキレないための力を身に付けるには、ある程度、長い期間が必要です。その意味で親の側も誰かに話を聞いてもらう努力をしていかないと、親のほうが持たないかもしれません。夫婦や親しい友人など、身近な関係の中で聞いてもらえるようにしておきたいですね。場合によっては、カウンセリングや教育相談なども積極的に、そして気軽に活用しましょう。
 
――ほかに接する上での注意点はありますか
 一生懸命な親ほど、子どもとの会話が「説教」になってしまうことがあります。親子の会話は、あくまで雑談でいきましょう。そして、子どもがいいこと、正しいことを言った時には感心している気持ちを伝えましょう。すると、子どもはうれしいですし、自分が言ったことなので、一方的に教え込まれるより、よほど身に付きます。また、子育てを機械任せにしがちな親は、子どもと一緒に遊ぶことも得意でないことがあります。特別なことではないのですが、とにかく一緒に遊んであげてほしいと思います。遊ぶ時は、あくまで「子どもを中心に」遊んでほしいのですが、これが意外に難しいのです。
 
子の思いに"喜んで"応じよう
 
【遊ぶ時は「子ども中心」で】
――「子ども中心」とは?
 一緒に遊んでいるつもりでも、「せっかくだから○○もやりなさい」「次はこっちのほうがいいんじゃない?」等と、親の思い通りに遊ばせようとしていることが多いのです。もちろん、よかれと思って言っているのですが、やはり子どもの思い通りに遊ばせるのがよいでしょう。その時、子どもの満足度は、ほかの時とはまったく違うと言っていいほど高いものになります。
 
――親子のあり方について、アドバイスをお願いします。
 私は「甘やかさず、甘えさせる」という親子関係が大切だと訴えています。「甘やかす」とは、子どもが要求していないことを親がサービスすることです。その真ん中にあるのは、あくまで、「親の気持ち」です。逆に「甘えさせる」とは、子どもの要求に喜んで応じることです。たとえば、子どもが「ほめて」と言っている時に、喜んでほめてあげるなどです。子どもの自発的な気持ちの表現に沿っていくのです。もちろん、親が心の底から子どもをほめたくなった時には大いにほめていただいて結構ですが、言われないうちから何でもかんでもほめてばかりいると、いつもほめられていないと不安定な子どもになることがあるので、注意が必要です。
 
[事務局長 菅野司のコメント]
 親が真剣に子育てに関わらなければ、子どもが育ちにくい時代になっている、そのことが一番の問題なのです。私は団塊の世代の人間です。平成の前の昭和という時代の親は「子育て」などということを気にしなくとも生活ができていました。どの町にも子どもたちが集団で遊べる「原っぱ」があり、子どもたちはそのなかで「集団として、社会のルールの基礎を身につけ、大人になるため準備」をすることができました。子どもたちにとって、学校は「勉強の場」であり、地域は「遊びのなかで社会人となる基礎を学ぶ場」として存在していました。平成の時代に「同じ」様な経験をさせることはできないとしても、それに近づけた施策の展開はできます。親たちが子育てにさほどの苦労をしなくとも、子どもがよりよく育ちあう環境づくりは「国と行政と企業の責任」なのです。子育てを個々の家庭の責任だけにしないで、そのことをもっと真剣に論じることが大切です。そのうえで、家庭・家族・親のあり方を論じたいものです。
 
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