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組織を強くするチーム・コーチング
思いや夢を共有することが大切 |
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聖教新聞2006年10月15日付
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くらよんくらぶ930号
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| 誰のための職場か 何のための職場か |
| 近年、組織のきし軋みを示す事例がよく目につく。 |
| 日本が誇りにしてきたモノづくりでは、ソニー、トヨタ、日立などの大企業が品質面でつまづ躓いている。明治生命のように、顧客との約束をないがしろにしてまで利益に走った例もある。常識的におかしいと思ってもトップの言うがままに進んでしまったライブドアや村上ファンドは不祥事を起こした。このように、本来あってはならない不祥事や不手際が毎日のようにニュースに上る。 こうした問題の背景には何があるのだろうか。なぜ日本の企業組織はぜいじゃく脆弱化してしまったのだろうか。そして、この問題は、責任の明確化、教育の徹底、コンプライアンス(法令順守)のためのマニュアルや規則類の整備で解決されるのであろうか。 |
| どうも、そうではないようだ。もちろん最低限の防止の仕組みや教育は必要である。しかし、こうした不祥事は、自分本位のあくなき競争を通じた利益の追求や、気まぐれで絶え間ないリストラ、M&A(企業の合併・買収)にほんろう翻弄される社員など、"疲弊した現場"に起因するのである。 そして、現場には、トップダウンによって無理に目標数値を押し付ける誤った成果主義が蔓延している。目標必達のためには問答無用でやりきることを是とすうような、思考停止を招く風土である。人間らしい倫理観や常識はなく、社員は少し立ち止まって考えることすらできない。いわば人間性が疎外された現場の姿であり、その結果、競争に目が眩んだゆえの不祥事や行きすぎた利益志向、メンタルヘルスの問題などが現れている。 |
| こうした中、今、多くの組織で「一体誰にとっての職場なのか?われわれは何のために仕事をしているのだろうか?」ということを再確認しようと機運が高まっている。視点を変えれば、「本来、自分たちは一体何をすべきなのか?自分は何をしたいのだろうか?」という主体性の大切さに、私たちはようやく気づき始めたといってよいだろう。 |
| 「双方向の対話」が主体性はぐくむ |
| ではどうすれば、社員一人一人が組織に流されることのない主体性を取り戻せるのであろうか。そのカギはコミュニケーションにある。特に、個々人の目標設定におけるコミュニケーションが重要だ |
| 私は本来、何をすべきなのか――この問いは、自分の主体性を取り戻すとともに、組織として追求すべき目標の質をも問い直し、目標を高質化する契機になるからだ。「決まったことなんだから、ただ黙ってやればいいんだよ」では、不祥事は繰り返されてしまい、新しいアイデアや楽しい目標、より高い志は出てこない。現在、日本企業の8割以上で、「目標管理(MBO:Management By Objectives)」が人事管理の基本として利用されている。毎年初めに、上司と部下が年間目標を相談し、約束しあう。そして1年をかけて、進捗状況を確認しながら目標を達成していく仕組みだ。 |
| しかし、冒頭で述べたような日本企業の問題は、目標管理を導入しつつも、コミュニケーションを欠き、けいがい形骸化していることから起きている。相談しあう中で目標を設定するのではなく、部下は目標を十分な説明もないまま一方的に押し付けられるため、進捗確認よりもプレッシャーが先行してしまう。 |
| そこで、目標設定を助けるコミュニケーションの手法として、「コーチング」が用いられるようになった。「コーチング」とは、上司が部下に対して、適切な質問をして、考えを整理させたり、胸の内を吐露させることである。それによって、本当の気持ちに気づかせ、自発的なやる気を引き出すのだ。質問を中心にした、主体的な行動を促すためのコミュニケーションスキルと定義できよう。例えば、「売り上げをあと10%伸ばすことができれば、どんないいことがあると思う?」という具合だ。コーチングでは「答えは外から与えられるのではなく、自分の中にある」というのが、原則の考え方であり、コーチはそれを引き出す役に徹するのだ。(売り上げを「勉強」に代えると、親子のコーチングになります!) |
| 目標設定時にこそ語り合う「場」を |
| そして、コーチングをさらに一段進めた手法が「チーム・コーチング」である。 |
| 「チーム・コーチング」では、目標の高質化を狙うため、上司の側がまず、自分の仕事やけんあん懸案事項に対する「思い」や「ビジョン」を述べるところから始まる。思いやビジョン(あるいは夢、価値観や信念)のような自らの主観を述べることによって、上司としての主体性を表現し、部下にも主体的に目標を考えてもらうよう促すのだ |
| 例えば、こんな具合に――「自分としては、3年後にはもう一軒の店を持てるようにしたい。そして、地域でもっとも信頼の厚い店になるよう、着実に評判を高めていきたい。だから、今年から10%ずつ売り上げを伸ばしていきたいと思っている。これが僕のビジョンだけど、どう思う?君はどんな貢献をしてくれるのかな?今の仕事での君の夢も教えてよ」一方的に聞き出すのではなく、チームで思いを語り合い、目標をつむ紡ぎだし、摺り合わせるコミュニケーションのプロセスが「チーム・コーチング」なのだ。要するに、双方向の対話を持つことで、互いが夢や気持ちを理解しあい、本当にすべきことを明確にしていくのである。 |
| それゆえ「チーム・コーチング」は、目標管理の中でも、特に初期の目標設定時に行うべきである。年初めに、その年にかける思いを語り合い、将来のビジョンを共有しあう――そうした"場"が必要ではないだろうか。思いを共有し、自分として本当に意味のある、一年をかけるにふさわしいやりがいを見出せることのできる目標設定プロセスが、今まさに必要とされている。 |
| それは、企業組織にとどまらず、多くの組織に当てはまるに違いない。思いを組み込んだMBO、つまり思いのマネジメントは「MBB(Management By Belief)」と呼ばれる。MBOからMBBへの転換を図ることは、組織の強化・再建への確かな手だてとなるはず。MBBによって熱い思いを語り合う中でこそ、主体性をもつ社員が集う職場、そして常識的な判断のきちんとなされる組織風土が必ずや育まれるに違いない。 |
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(「フライシュマン・ヒラード・ジャパン」シニア・バイス・プレジデント)
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| 徳岡 晃一郎・とくおか こういちろう |
| 東京大学教養学部卒。オックスフォード大学経営学修士。1980年、日産自動車入社。同社人事部、欧州日産などを経て、99年、社内外コミュニケーションに関する世界最大手のコンサルティング会社「フライシュマン・ヒラード」に転じ、企業向けの人事、企業変革、社内コミュニケーションなどについて、コンサルティングを提供している。著書に『人事異動』『"本気"の集団をつくるチーム・コーチングの技術』など。多摩大学客員教授も務める。 |